数理最適化を用いる文献を読んでいると,相対的内部(relative interior)という概念がでてくることがあります.位相空間論の概念である内部(interior)と似ているものであることはすぐわかるのですが,それらの違いがイメージできずにモヤモヤしてしまうことが多いので,その内容をまとめることにしました.はじめに内部の定義と相対的内部の定義を調べ,その後で具体例を用いてそれらの違いを示します.


内部について考えるため近傍(neighborhood)の定義が必要です.以下の過去記事にあります.

 集積点,閉包,稠密,可分の定義をメモする - エンジニアを目指す浪人のブログ


内部の定義をKreyszig(1989)から引用します(和訳しています).

集合 {displaystyle M subset X  }{displaystyle x_0 } の近傍のとき,{displaystyle x_0  } を集合 {displaystyle M  } の内点と呼ぶ.{displaystyle M } の内部とは {displaystyle M } のすべての内点からなる集合で,{displaystyle M^0 } あるいは {displaystyle mathrm{Int}(M) } と書かれる,しかし一般的に受け入れられている記法はない.{displaystyle mathrm{Int}(M) } は開集合であり, {displaystyle M } に含まれる最大の開集合である.

 

相対的内部について考えるためいくつか準備をします.

アフィン集合(affine set),アフィン結合(affine combination)の定義をBoyd and Vandenberghe(2004)から引用します(和訳しています).

{displaystyle C subseteq mathbb{R}^n } に属する任意の2つの異なる点を通る直線が {displaystyle C } の内部にあるとき,すなわち,任意の {displaystyle x_1,x_2 in C,  	heta in mathbb{R} } について {displaystyle 	heta x_1 + (1-	heta) x_2 in C } となるとき,集合 {displaystyle C } はアフィンであるという.いいかえると,{displaystyle C }{displaystyle C } に含まれる任意の2点による係数の和が1となる線形結合を含む.

 このアイデアは2点以上の場合に一般化される.{displaystyle 	heta_1 + cdots + 	heta_k =1 } として {displaystyle 	heta_1 x_1 + cdots + 	heta_k x_k } を点 {displaystyle x_1,ldots,x_k } のアフィン結合という.アフィン集合の定義(すなわち,アフィン集合はそれに含まれる2点によるあらゆるアフィン結合を含む)より,アフィン集合はその点によるあらゆるアフィン結合を含むことが示される: {displaystyle C } がアフィン集合で {displaystyle x_1, cdots , x_k in C,  	heta_1 + cdots + 	heta_k =1 } ならば,点 {displaystyle 	heta_1 x_1 + cdots + 	heta_k x_k } もまた {displaystyle C } の要素である.


アフィン包(affine hull)の定義を引き続き引用します(和訳しています).

ある集合 {displaystyle C subseteq mathbb{R}^n } に属するすべてのアフィン結合からなる集合はアフィン包とよばれ,{displaystyle mathrm{aff}  C } と書かれる:

{displaystyle ;;;;;; mathrm{aff}  C= { 	heta_1 x_1 + cdots + 	heta_k x_k  |  x_1,ldots,x_k in C,  	heta_1 + cdots + 	heta_k =1 } }

アフィン包は以下の意味で {displaystyle C } を含む最小のアフィン集合である: {displaystyle S } が任意のアフィン集合で {displaystyle C subseteq S } のとき,{displaystyle mathrm{aff}  C subseteq S } である.

 

アフィン次元(affine dimension)の定義を引き続き引用します(和訳しています).

集合 {displaystyle C } のアフィン次元をそのアフィン包の次元として定義する.アフィン次元は凸解析や凸最適化において役立つが,次元の他の定義とつねに整合しているわけではない.1つの例として {displaystyle mathbb{R}^2 } における単位円,すなわち {displaystyle { x in mathbb{R}^2  |  x_1^2 + x_2^2 =1 } } ,を考える.そのアフィン包は {displaystyle mathbb{R}^2 } 全体である,よってアフィン次元は2である.しかしながら,ほとんどの次元の定義では,{displaystyle mathbb{R}^2 } における単位円の次元は1である.

 

相対的内部(relative interior)の定義に進みます.閉包(closure)の定義は先ほどの過去記事にあります.引き続き引用します(和訳しています).

集合 {displaystyle C subseteq mathbb{R}^n } のアフィン次元が {displaystyle n } 未満ならば,その集合は アフィン集合 {displaystyle mathrm{aff}  C 
eq mathbb{R}^n } 上にある.集合 {displaystyle C } の相対的内部 {displaystyle mathrm{relint}  C }{displaystyle mathrm{aff}  C } に対する内部として定義する:

{displaystyle ;;;;;; mathrm{relint}  C = { x in C  | left( B(x,r) cap mathrm{aff}  C 
ight) subseteq C  mathrm{;; for  some}  r gt 0 } }

ここで {displaystyle B(x,r)= { y  |  ||y-x|| le r } } で,ノルム {displaystyle ||cdot|| } についての半径 {displaystyle r },中心 {displaystyle x } の球である.(ここで {displaystyle ||cdot|| } は任意のノルムである; すべてのノルムは同じ相対的内部を定義する) 集合 {displaystyle C } の相対的境界(relative boundary)を {displaystyle mathrm{cl}  C setminus mathrm{relint}  C } として定義することができる,ここで {displaystyle mathrm{cl}  C }{displaystyle C } の閉包である.

 

ここまでで内部と相対的内部の定義をみてきました.いよいよ,具体例を用いてそれらの違いをみていきます.文献[3]を参考にしています.

1つめの例として以下の閉球を考えます.そのアフィン包も示します.アフィン次元が {displaystyle 2 lt 3 } であり,たしかに {displaystyle I^2 }{displaystyle mathrm{aff}  I^2 } 上にあることがわかります.

{displaystyle ;;;;;; I^2= { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3  |  0 le x_1 le 1,  0 le x_2 le 1,  x_3 =0 } }
{displaystyle ;;;;;; mathrm{aff}  I^2= { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3  |  x_3 =0 } }

内部と相対的内部は以下です.

{displaystyle  ;;;;;; mathrm{Int}  (I^2)= emptyset ;;; } (空集合)
{displaystyle  ;;;;;;  mathrm{relint}  I^2= { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3  |  0 lt x_1 lt 1,  0 lt x_2 lt 1,  x_3 =0 } }


2つめの例として以下の立方体を考えます.そのアフィン包も示します.

{displaystyle  ;;;;;; I^3= { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3  |  0 le x_1 le 1,  0 le x_2 le 1,  0 le x_3 le 1 } }
{displaystyle  ;;;;;; mathrm{aff}  I^3= { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3 } }

内部と相対的内部は以下です.

{displaystyle  ;;;;;; mathrm{Int}  (I^3)= mathrm{relint}  I^3 = { (x_1,x_2,x_3) in mathbb{R}^3  |  0 lt x_1 lt 1,  0 lt x_2 lt 1,  0 lt x_3 lt 1 } }

 

3つめの例としてある1点を考えます,これのアフィン包はこの点自身です(文献[4]に記載があります).内部は {displaystyle emptyset },相対的内部はこの点自身です.


特に1つめの例では,内部は空集合ですが,アフィン包を巧みに用いることで相対的内点は空集合となることを回避しています.Boyd and Vandenberghe(2004)には,“ある集合 {displaystyle C subseteq mathbb{R}^n } が空集合でない内部をもつことと {displaystyle mathrm{Int} (C) = mathrm{relint}  C } は同値である”ことを意味する記述があります.

 

以上,内部と相対的内部の違いについて考えてみました.上記の具体例から,文献[5]にある,“高次元空間内の低次元集合を扱う際にしばしば有用となる”,という記述の意味がイメージできるようになったのではないかと思います.

 

参考文献
[1] Kreyszig, E. (1989), Introductory Functional Analysis with Applications, Wiley.
[2] Boyd, S., and Vandenberghe, L. (2004), Convex Optimization, Cambridge University Press.
[3] planetmath.org relative interiorのページ http://planetmath.org/relativeinterior
[4] Wikipedia Affine hullのページ https://en.wikipedia.org/wiki/Affine_hull
[5] Wikipedia 相対的内部のページ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E5%86%85%E9%83%A8